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歩く会合宿、思い出の品々。
今日は貴重なお休み、なにしようかな、美術館でもいくかとPC立ち上げたものの
いつのまにか辿りついた我が懐かしきホームページにアップした写真を見てニヤついてたら日が沈んでました。
この写真の編集、なにが楽しかったってコメント考えてる時がすごく楽しい。
ほぼ関係ない2つの写真をうまく並べつつコメントを添えることでいかに面白くできるか、
それだけをひたすら苦心しながら4年間編集してまいりました。
みなさんはどの合宿写真がお気に召しましたか?
ボクはやはり最後ということもあって4年生夏合宿の写真が好きです。
2年夏のジンギスカンのくだりのブラックさや3年夏の情けないウルトラマンシリーズも気に入ってますが。
禍々しき「大佐トランプ」は、現歩く会では失われた文明となってしまったのでしょうか。
2年夏の青函トンネル抜けた際の杉山さんの脇がエロいなと、この歳にして気付きました。
4年の帰りヒッチハイクで乗せてくれた松ちゃんさんトモさんは半年くらい前に東京で会いました。
というわけで懐かしの写真が置いてある旧ホームページのURLを貼っておきます。
2005年(ボクが1年生です)と年季が入ってますが尾瀬の写真などもありますので、
尾瀬にいこうかなとお考えの方はぜひご参考までにご覧ください。
http://www13.atpages.jp/carvel/
なお、ここのホームページは今後も更新の予定はありません。
なぜなら更新の仕方をキレイさっぱり忘れてしまったからです。
万が一写真をアップすることになりましたら新しいホームページを作ります。ご了承ください。
以下は、ホームページにアップしてない、夏を感じる写真です。
ボクが1年の頃の部長、島貫さん 檜洞丸にて。
3年生のとき単独で1週間、屋久島・宮之浦岳頂から。
4年生夏、山小屋での住み込みバイトにて白馬岳山頂付近1カ月滞在。山頂から杓子岳・白馬鑓ヶ岳を望む。
ライチョウの親子。白馬岳山頂付近にて。
2009年7月下旬、ニッコウキスゲのお花畑。尾瀬沼にて。
ニッコウキスゲ、接写。尾瀬ヶ原。
オニユリ、接写。尾瀬ヶ原。
ここで告知しておきます。
7月9、10日に尾瀬にいきます。8日の深夜、夜行バスにて向かう予定です。
初夏の尾瀬沼&尾瀬ヶ原を堪能しつつ、至仏山または燧岳に登山予定です。
のんびりプランですので体力に自信のない方でも問題ありません。
予算は7000円程度。
参加希望の方はボクまで。メアド知らない方はこちらに書き込むまたは現部長まで連絡お願いします。
井の頭公園は魔の森だ。
天気の良い休みの日、井の頭公園でビールを飲みながらベンチで読書をすることがある。
気に入っているのは、いせやの横の階段を下ったところにある橋の前を右折し、
池に沿って少し進んだところにある4つ連なったベンチだ。
そこだけは手すりが設置されておらず直に池と面した石畳のスペースで、
この時期になると春のあたたかな風と、風に揺れさやさやと心地よい音を奏でる柳の木、
その柳の葉の隙間をすかして池向こうに輝く西日が実に情緒ある景色を形作る。
時折、池のカモが餌探しのため脇の土手からペタペタと上陸し、
その愛らしい様子を目を丸くしてジッと観察する子供たちもまたボクの心をなごませる。
そんなまことにのどかな景色を楽しみながら、小一時間ほどのんびりと愛する本を読む。
ビール缶が空になり、西日も弱まってくる、そろそろ帰るか、と顔をあげる。
すると周りはカップルにすっかり染められている。
子供はもういない。西日はもう完全に沈んでしまった。
後に残ったのはただカップルのギラギラと鈍く光る欲情のみである。
こないだなどは危なかった。
4つ連なるベンチのうち、右から2つ目のベンチに座り、2時間ほど耽読した。
帰ろうとすると両隣のベンチはすでにカップルの愛の巣と成り果て、異臭をまき散らしている。
ここまではすでになれっこだ。毎夜死霊に襲われるガッツ並に落ち着いて対応できる。
ふむ、そろそろ潮時だな、と辺りを見回すと、
散歩道を挟んだ先のベンチが陥落し、若い男女によるネトネトとした絡みが展開されている。
はて、おかしい。そこはたしかいつも難しげな顔をして本を読んでいる白髪の老人がいたはずだ。
あの老人はどこにいったのか。
不思議に思っていると、1組のカップルが散歩道から逸れてこちらに寄ってくる。
戸惑う間もなく、ボクの座るベンチの前に寄り添いながらしゃがみこみ、鯉に餌をやり始めた。
2人の背中に浮き上がる、欲情の陰。
一筋の汗が頬を伝う。
囲まれている。
左右どころか、四方をカップルに取り囲まれている。
慌てて周囲を見やうと、散歩道を歩くのは専らカップルの群れのみだ。
カップル、恋人、アベック、デュオ、新婚さんの百鬼夜行。
動悸が激しくなる。喉が渇く。
鯉に餌をあげながら甘栗色の髪をなびかせた彼女のほうが「パクパクいってるー」などと
なにやら卑猥なことを口走っている。
何をする気だ、公共の面前で何をする気だ。
とすると、彼らの餌につられたのであろう、慣れ親しんだカモらしき鳥が向こうからやって来るのが見える。
ああ、ボクの世界!昼の世界!キミだけがボクの味方!
すっかり暗くなった闇からその白く愛らしい姿を現す。
2羽。
思わずベンチから崩れ落ちそうになる。
思えば後ろのベンチに座っていた老人は奴らに咬まれたのだ。そうに違いない。
そして一組のカップルに成り果てた。なんということだろう。
ここまで追いつめられるともう手の打ちようがない。
どれもこれもカップルに見える。
あいつらもカップル、あいつらも恋人、あっちにJK、こっちに熟年、
男2人、それはゲイだ騙されるな、おい、その道具を一体どう使うつもりだ!
闇夜に蔓延る乱交、獣姦(SM込み)、近親相姦、なんでもござれ、ようこそ、ここは煉獄地獄。
…
あの魔の者どもはいったいどこから湧いてくるのだろう。
井の頭公園のボートに乗ると別れるというジンクスがあるが、あれは別れたカップルの亡霊なのではないか。
吉祥寺のサンロードの5倍、いやそれ以上のカップル数である。そうでないと説明がつかない。
成仏できず、夜になると墓場の土から這い出て、夜な夜な野外ステージでスリラーを踊っているのではないか。
そしていつしか井の頭公園を恋愛亡霊の一大拠点とせんとする野望を標榜しているのではないか。
実現した暁には、池の色をローションにし、鯉の鱗をハート型、アヒルボートの目は少女漫画風にするつもりなのだ。
橋はヴァージンロード風に改築され、建物はすべてラブホテル風に仕上げられ、旅館和歌水はリニューアルする。
黒光りした幹の木々に茂る葉は肉感豊かなピンク色、道に転がる小石には回転式のOn/Offスイッチがついている。
そして満月の夜にもなると野外ステージに集まり全員全裸でスリラーを踊るのだ。
井の頭公園は魔の森だ。
天気の良い休みの日、井の頭公園でビールを飲みながらベンチで読書をすることがある。
気に入っているのは、いせやの横の階段を下ったところにある橋の前を右折し、
池に沿って少し進んだところにある4つ連なったベンチだ。
そこだけは手すりが設置されておらず直に池と面した石畳のスペースで、
この時期になると春のあたたかな風と、風に揺れさやさやと心地よい音を奏でる柳の木、
その柳の葉の隙間をすかして池向こうに輝く西日が実に情緒ある景色を形作る。
時折、池のカモが餌探しのため脇の土手からペタペタと上陸し、
その愛らしい様子を目を丸くしてジッと観察する子供たちもまたボクの心をなごませる。
そんなまことにのどかな景色を楽しみながら、小一時間ほどのんびりと愛する本を読む。
ビール缶が空になり、西日も弱まってくる、そろそろ帰るか、と顔をあげる。
すると周りはカップルにすっかり染められている。
子供はもういない。西日はもう完全に沈んでしまった。
後に残ったのはただカップルのギラギラと鈍く光る欲情のみである。
こないだなどは危なかった。
4つ連なるベンチのうち、右から2つ目のベンチに座り、2時間ほど耽読した。
帰ろうとすると両隣のベンチはすでにカップルの愛の巣と成り果て、異臭をまき散らしている。
ここまではすでになれっこだ。毎夜死霊に襲われるガッツ並に落ち着いて対応できる。
ふむ、そろそろ潮時だな、と辺りを見回すと、
散歩道を挟んだ先のベンチが陥落し、若い男女によるネトネトとした絡みが展開されている。
はて、おかしい。そこはたしかいつも難しげな顔をして本を読んでいる白髪の老人がいたはずだ。
あの老人はどこにいったのか。
不思議に思っていると、1組のカップルが散歩道から逸れてこちらに寄ってくる。
戸惑う間もなく、ボクの座るベンチの前に寄り添いながらしゃがみこみ、鯉に餌をやり始めた。
2人の背中に浮き上がる、欲情の陰。
一筋の汗が頬を伝う。
囲まれている。
左右どころか、四方をカップルに取り囲まれている。
慌てて周囲を見やうと、散歩道を歩くのは専らカップルの群れのみだ。
カップル、恋人、アベック、デュオ、新婚さんの百鬼夜行。
動悸が激しくなる。喉が渇く。
鯉に餌をあげながら甘栗色の髪をなびかせた彼女のほうが「パクパクいってるー」などと
なにやら卑猥なことを口走っている。
何をする気だ、公共の面前で何をする気だ。
とすると、彼らの餌につられたのであろう、慣れ親しんだカモらしき鳥が向こうからやって来るのが見える。
ああ、ボクの世界!昼の世界!キミだけがボクの味方!
すっかり暗くなった闇からその白く愛らしい姿を現す。
2羽。
思わずベンチから崩れ落ちそうになる。
思えば後ろのベンチに座っていた老人は奴らに咬まれたのだ。そうに違いない。
そして一組のカップルに成り果てた。なんということだろう。
ここまで追いつめられるともう手の打ちようがない。
どれもこれもカップルに見える。
あいつらもカップル、あいつらも恋人、あっちにJK、こっちに熟年、
男2人、それはゲイだ騙されるな、おい、その道具を一体どう使うつもりだ!
闇夜に蔓延る乱交、獣姦(SM込み)、近親相姦、なんでもござれ、ようこそ、ここは煉獄地獄。
…
あの魔の者どもはいったいどこから湧いてくるのだろう。
井の頭公園のボートに乗ると別れるというジンクスがあるが、あれは別れたカップルの亡霊なのではないか。
吉祥寺のサンロードの5倍、いやそれ以上のカップル数である。そうでないと説明がつかない。
成仏できず、夜になると墓場の土から這い出て、夜な夜な野外ステージでスリラーを踊っているのではないか。
そしていつしか井の頭公園を恋愛亡霊の一大拠点とせんとする野望を標榜しているのではないか。
実現した暁には、池の色をローションにし、鯉の鱗をハート型、アヒルボートの目は少女漫画風にするつもりなのだ。
橋はヴァージンロード風に改築され、建物はすべてラブホテル風に仕上げられ、旅館和歌水はリニューアルする。
黒光りした幹の木々に茂る葉は肉感豊かなピンク色、道に転がる小石には回転式のOn/Offスイッチがついている。
そして満月の夜にもなると野外ステージに集まり全員全裸でスリラーを踊るのだ。
井の頭公園は魔の森だ。
春先出合った愛すべき者どもなどを。
長いです。
音楽のほかに小説、マンガ、飲料も防備録代わりに書いてみました。
だからいつもより余計に長いです。
・音楽
tUnE-yArDs / W H O K I L L
プリミティヴかつパワフルなパーカッションとベースに全く力負けすることのない
メリル・ガーバスの声が実にエネルギッシュなチューンヤーズの2ndアルバム。4ADからリリースです。
ザ・スリッツやMIAのごときしなやかで野性味溢れる声の持ち主かと考えておりましたが、
むしろこちらサイド主体のアルバムも聴いてみたいと思わせるような
M9に代表される繊細なヴォーカルもとれるのが実に驚きであり、素晴らしいと感じます。
自主製作盤であった1枚目では用いられなかった電子楽器類も今作でいいアクセントを出しております。
BiznessのPVもまた絶品でございます。
Battles / Glass Drop
メインソングライターであったタイオンダイ・ブラクストンが脱退し3人組となった
ブルックリンのスーパーグループによる2枚目。Warpより発売。
遊び心担当であったタイオンダイがいなくなったことでさらに無駄を省きタイトになったといった印象です。
翻して申せばやや筋肉質に過ぎるのではという疑念も頭をもたげておりまして、
そのせいかアルバム後半につれて観賞に疲れてしまうということが何度かありました。
若いころなどはケロリとした顔で1周聴けたのでしょうが、歳は取りたくないものであります。
とは言いましてもトマホークのドラムとドン・キャバレロのギターがなお在籍することを念頭に置きますと
天才タイオンダイといえどバンドの支柱のひとつというわけで、
彼の脱退によってただのマッチョなグループとなることなどは考え難く、
つまりいわば過渡期に当たる作品となるのではないかと予想しております。
2011年淫靡なPV暫定1位です。男の夢詰め込んだかのような。
しかし去年のニュー・ポルノグラファーズのPVといいアメリカ人は空手好きですね。
Fleet Foxes / Helplessness Blues
2008年にデビューし、その1stアルバムが世界各メディアの賞賛を浴びたことで一躍有名となった
シアトルのフォークロックバンド、フリートフォクシーズの2枚目。リリース元はSub Pop。
美しいコーラスとアコースティックギターのメロディーラインを主な骨格とし、
ブルーリッジマウンテンやミコノス島、モンテズマにローレライといったように
世界各地の風光明媚を題材としたものも多い楽曲群が持つ、立ちのぼる霧のような視覚感と少しの暗く醒めた香りは
楽曲のキャッチーさが薄くなった分だけ、今作でより一層洗練され濃くなったように思います。
早く来日情報が来ないものでしょうか。
※PVは1stの国内版に収録されている「ミコノス」です。いつ聴いてもとびきりに美しい。
Panda Bear / Tomboy
ブルックリンの首領、アニマル・コレクティヴのメンバーによるソロ4作目。Dominoより発売。
前作「パーソン・ビッチ」で見せた遊び心の効いたサンプリングはなくなり、
バンドの最新作「メリウェザ」の油絵めいた極彩色のタッチを淡い水彩画にし、
盟友ブラフォード・コックスのソロ名義アトラス・サウンド風味に仕立てたと申しますか…。
今までと違いパンダ・ベアの歌声を主軸として作られた作品のように感じます。
Droneと銘打った曲さえも彼の声で押し切っているあたり、かなりその意識が強く出ているかなと。
クラウトロックの香りなどもややしますが、それでも今までの作品と比べると実験精神はやや気薄、
よくいえば程良く力が抜けた作品、言い換えると想定内の出来にとどまっていると言えます。
とはいえ再生回数は既に30回を超えており、やはり気に入っております。
Damon & Naomi / False Beats and True Hearts
1980年代のバンド、ギャラクシー500のメンバー2人によるユニットの通算8作目。20|20|20より発売。
80年代で好きなバンドを挙げろと言われると、トーキング・ヘッズやスミス、ピクシーズらと共に
ヴェルヴェッツから連なるニューヨーク・ロックの系譜上に位置するこのバンドの名が出てきます。
20年以上前のデビューアルバムから変わらず依然としてエヴァーグリーンといえる
この叙情的な楽曲たちにはどうにも抗うことが出来ません。
それどころか「On Fire」などよりもさらに深みが増しているように思います。
ラベンダーと子供達という会心のアートワークや繊細な歌詞も含め、全てがギャラクシー500の世界。
The Antlers / Burst Apart
ブルックリンの若手3ピースバンドの4thアルバム。レーベルはFrench Kiss。
鬱屈した歌詞と甘いメロディー、グズグズにしたようなエフェクト処理などからみるに
ブラフォード・コックスの影響下にあるバンドのひとつではないでしょうか、
ディアハンターとの違いとしては、楽曲の中にどこか苛立ちといった類の感情が潜んでいるところと
ヴォーカルであるピーター・シルヴァーマンのどこか攻撃的な声といえるような気がします。
アルバム全体にわずかに漂う、パンク精神はそれらから感じ取ったものかと。
ハイライト・トラックの「Every Night My Teeth Are Falling Out」からもわかりますとおり
自身の内部に溜まったどうにもならない不満(歯が抜け落ちる夢というのは性的不満を表すとされている)
を外に爆発させるのがディアハンターとの決定的な違いというふうに解釈しております。
アルバムタイトル「木端微塵」通り、実は21世紀パンクと言えるかもしれません。
EMA / Past Life Martyred Saints
元Gownsのエリカ・M・アンダーソンによるソロ1作目。リリースはSouterrain Transmissions。
ピッチフォークで高評価でしたので、試しに無料ストリーミングを聴き、のち購入。
なにか70年代プログレを感じさせるような展開のM1で始まるこのアルバム、
ポップとエクスペリメンタルをかけた秤の塩梅具合が実に良好です。
全域において鳴らされているフィードバックノイズも良い味付けで、
その緊張感と本来楽曲が持っているポップセンスのバランスでもって最後まで一気に聴けます。
カート・ヴァイルや後述するキャス・マッコムといい近頃のUSインディーSSWは興味深いですね。
Burial / Street Halo
ロンドンのダブステップメイカー、ウィリアム・ビーヴァンによるユニット、ベリアルの新作ヴァイナル。
リリース元はHyperdub。
久しぶりの新作ですが、相変わらずうっとりするほど完璧なアンダーグラウンド・サウンドです。
重心は徹底して低く、地響きのようなビートと冷たい空気を連想させる音響処理。
近年、他ジャンルとのクロスオーバー化著しいダブステップ(質の低下がやや懸念されます)ですが
この人は全く見向きもしていないのですね、ストイックに淡々と掘り下げています。
表題曲も含め3曲収録ですが、墨汁の如く芯からエッジまでひたすら黒く濃厚な20分レコードです。
本当に心の底から「カッコいい」。ちょっと別格すぎる気さえします。
2011年ベストシングル候補筆頭なのは間違いないかと。
Kode9 & Spaceape / Black Sun
Hyperdub主宰でありダブステッブメイカー、スティーヴ・グッドマンの2作目。Hyperdubよりリリース。
なにより購入した動機となったアートワーク、まずはこれに尽きます。
ダブステップとこの水で滲んだかのような日本画の組み合わせの妙など誰が考えましょう。
そしてブラック・サンというタイトル以上にどす黒く強迫的な内容。
ダブステップの黒さとはまた違う黒さ暗さといいましょうか、
ベリアルに代表されるダブステップの黒さとは雨に濡れたコンクリートの黒と言えると思うのですが、
この作品のそれは呪術的で薄気味悪さ付きまとう井戸の底を覗き込むかのごとき黒さであります。
今作ではデトロイト・テクノの影響も散見されますが、URなどのそれとも違うなんとも異質な黒さ。
それがこの作品の得体の知れない魅力であり、怖いもの聴きたさで何度も聴いてしまう理由なのかと。
それにしてもこのアートワークと内容…。予言めいてるという意見を持たれても仕方ありません。
2562 / Fever
オランダ人トラックメイカー、デイヴ・ユイスマンの3作目。When In Doubtからリリース。
DIY精神豊かな最小構成のミニマルテクノを主体としつつデトロイトの黒さもまとっており、
デイヴが幼少の頃に撮られた写真をあしらったアートワークからも読み取れる通り、
過去に敬意を表しつつ最新鋭を構築させた素晴らしいいぶし銀ダンス・ミュージックです。
ファンキーな全体像であり彼の情熱を感じずにはいられません。
フィーバーというタイトルにふさわしい内容かと存じます。
Cass McCombs / Wit's End
カリフォルニアで活動する変わり者なSSWによる通算5枚目にあたる作品。Dominoよりリリース。
初期の作品にあったザ・スミスの香りは全く感じられないくらいに、甘く耽美な曲のみで構成されております。
ギターもドラムもピアノも全てがつつましく、わずかなブレも感じさせない47分間でございます。
就寝前、ベッドに横になってする読書に実によく合います。
まだまだ未熟ながらも音楽を聴くうち、自分の趣向が変わっていくのが分かりまして、
と言いますのも段々とメロディーやテクニックなどよりも音の質感に重きをおくようになって参りました。
少年マンガの線のようなガチャガチャとした質感、氷の角のようにヒヤリとした質感、
ドイツの硬水のようにストイックな硬度の質感、ジャムのようにドロドロぐちゃぐちゃとした質感、
メタリックな機械に使われるような金属的質感、もちろん作品によって様々な感触があるのですが、
この作品は指でつまめそうなほどに丸く、それでいてすこし湿ったまりものような質感です。
Stimming / Liquorice
ドイツのトラックメイカー、スティミングの2枚目。リリースはDiynamic Music。
ミニマルのややツルリとした丸い質感にジャズの黒みを少し溶かしたかのような作品。
的確に配置されたサンプリングと東洋&アフリカ趣味的な楽器音や旋律も散見され、
その淡々とした進行が徐々に穏やかな高揚を与えてくれる実に素晴らしい作品かと存じます。
似た方向性の新譜として以前紹介いたしましたニコラス・ジャーがありますが
こちらはより内省的で実験的。ダンスフロアからかなり遠いところで作曲しています。
しかしこの手で触れられそうなくらいの音の粒。
Friendly Fires / Pala
UKのダンス・バンドによる2枚目。リリースはXLから。
彼らの1stアルバムはあまり好みとするところではなかったのですが、今回はやられました。
上に書いたような音の質感もこれを聴くとどうでもよくなってしまいますね、すごいキラーチューン。
ベリアルはレイヴ・カルチャーへのレクイエムという代名詞が時折使われておりましたが
そうなるとこちらはレイヴ・カルチャーに対するなんと形容されるのでしょうか?
彼らはレイヴの終焉とともに思春期がやってきた世代でしょうから、やはりレイヴに対する憧憬でしょうか。
本家と比べ底抜けに明るいのも憧れからと考えれば納得ですし、また同世代のボクも頷けるところがあります。
アルバム全体につきましてはこちらのHPの全曲無料ストリーミングで数回聴いた程度ですので割愛。
とにかくこの曲のカッコよさには痺れました。
・読み物
ミシェル・ウエルベック / 素粒子
ブリュノとミシェルという、ひとりはコンプレックス、片方は冷淡なため形は全く違えど
愛が得られない2人の兄弟の鬱屈した精神をSFやエロスを交え描いたフランス小説。
文章に理路整然めいた美があることがなによりも特徴として挙げられます。
その硬性の文学のなかに、現代社会にまつわるあらゆるもの、
それこそフロイトからP・K・ディックまで詰め込んだ作品のように感じます。
その詰め込みがやや過ぎている部分があり、
それがまた既存のフランス小説とはまた一線を画しているようにも感じますが、
とにかく読んで損はない作品かと存じます。
トマス・ピンチョン / 逆光
20世紀初頭の激動期にあるアメリカにあった2つの家の因縁を中心に据えて、
ありとあらゆるもの、つまり世界経済・国家摩擦・民族問題・宗教観・世紀的発明・20世紀B級SFなどを
大鍋に投げ込みごった煮にし最後に爆弾投げ込んだような、ピンチョン節炸裂ともいえる最新作。
とにかく話が桁違いに壮大なのはいつも通りなのですが、
今回はあまり掴みどころをよく把握できないままに読み終えてしまいました。
ピンチョンですとボクは「競売ナンバー49の叫び」などが好みなのですが
あの作品のように隅々まで構築されているかと聞かれるとやや疑わしいところもあるように思います。
が、とりあえず日本文壇では生まれえぬスケールの小説であることは間違いなく、
また時が経ったら読みなおしをはかりたいと思う次第でございます。
阿部和重 / ピストルズ
「シンセミア」以後の神町サーガを書いた、いわば続編。
阿部和重の歳代の特徴である堅苦しくもどこか奇妙な印象を抱いてしまうような文章と
そこに潜ませた意味ありげな謎の単語などでドロドロになるまでタメをつくったあと
一気に加速させラストまで持っていくという手法(特に初期作品に顕著)は今回も健在であり、
途中で投げ出さなければ十分に楽しめる佳作となっておりました。
こういう手法を書かせたらこの人が一番だとは思いますので、
阿部和重作品を未体験かつクドさのある文に抵抗のない方でしたら、ぜひ一読されてみては。
ジェイン・ジェイコブズ / アメリカ大都市の死と生
いかんせんわかりずらい難解な訳に終始しておりましたので読み切るのに大変骨を折ります。
都市社会論のジョゼ・モウリーニョみたいな人だなぁといった感想。
既存の都市論にありがちだったという理想にすぎない机上の都市論などをズバズバと批判しつつ、
とはいえ市民論に依ることこともなく、むしろ市民にありがちな安全意識、見かけだけのエコ意識
についても鋭い洞察でもって問題があるということを本文中で促しています。
まさに目から鱗、現代社会都市論としてとても新鮮な内容でした、惜しむらくは読みにくいこと。
内容が凡庸でしたら完全に50ページほどで投げてたことでしょう。
ヴィンランド・サガ / 幸村誠
プラネテスの作者による、中世イングランドを舞台に一人の青年の成長を綴った物語。
温かみのある会話と滲み出るような深みはさすがの一言です。多少の誤差あれど人間歳を取るにつれて
刺々しく攻撃的→棘がとれてやや内省的になる→穏やか
という具合に風化するものとは思いますが、その描写がとびぬけて卓越していますし、
きっと作者が一番伝えたいことなんだろうと思います。
ボクもその考えに同意しますし、そのように成長していきたいと思っております。
へうげもの / 山田芳裕
史上最悪の打ち切り劇といわれた未完の大作「度胸星」の作者が連載中の歴史物。
古田重然が主人公という、戦国時代マニア、もしくは古き良きKOEI作品を嗜んだ方ならニヤリとするような視点から描いた作品。
線の太い特徴的かつダイナミックな絵で茶道とその周りに息巻く陰謀欲望を生々しく描いています。
本能寺の首謀者といった、昔から話されている異説なども上手くとりいれ、
戦国マンガとしても楽しめる内容ではないでしょうか。
・ワイン
メモリーズ シャルドネ 2010
チリの某有名生産者を作っているらしいシャルドネ。580円。
チリ産とはいえこれはコストパフォーマンスがずば抜けています。500円台でこの品質。
やや緑がかったレモンイエロー。洋ナシ、リンゴの蜜のような香り。
スレンダーな果実味とキレイな酸を樽由来とおぼしき甘みがささえています。
しつこくなくスッとしたアフター。バランスの良い王道安旨シャルドネ。
なによりも値段。1400円くらいの味がします。
ブルゴーニュ ピノノワール 2008 / ロベール・シュルグ
ブルゴーニュのいぶし銀生産者。1780円。昔プティモンを買ったらブショネでしたが、それ以来。
昔は鋼の熟成必須型でしたが、2007年から作りがグッと現代的になり即飲みできるようなものになったそうです。
少し濃いめのルビー色。イチゴ、ラズベリー、梅、ミネラルの香り。
スパイス混じりの豊かな果実味とマロ発酵由来の優しい酸、まだまだ元気なタンニン。
深みがあり構成がしっかりしてます。2日目がピーク。生の赤果実かじってるかのようでした。
いいピノです。
ブルゴーニュ ピノノワール 2009 / ジョエル・ユドロ・バイエ
2380円。軍隊上がりのダンディマッチョが作る滋味深い生産者です。
鮮やかなルビー色。グーズベリー、イチゴがまず来て、次いでリコリスやスパイスの香り。
スケールは小さいものの、圧倒的果実味。酸はやや抑え気味なので緊張感はないが
それを補うほどのフルーツバスケット状態。シャンボールミュジニー生産者らしい細かいタンニン。
例年と比べややニューワールドっぽくなってるのはやはり2009年の気候のせいでしょう。
今飲みに最適でした。開けて半日がピークっぽかったです。
ヴァン・ド・ペイ ピノノワール 2009 / ヴィニョーブル・ギョーム
2280円。当代一の苗木家が南仏で作っているピノの09年もの。
やや赤みがかったルビー色。ディスクはやや薄めで液体はわずかに濁り。
ラズベリー、スミレ、なめし革、ミネラルの香りなど。開戦直後には還元臭も。
凝縮した果実味、健康的で上品な酸、ほどよく細かいタンニン。
スタイリッシュな複雑味とボリュームがあり、フィネスの気配さえもあります。
あと3年ほど寝かすと素晴らしいことになるのではないでしょうか。2日目さらにおいしくなりました。
ヴェレナー クロスターベルク カビネット リースリング 1999 / シャトー・ベレス
2180円。ドイツの熟成リースリング。
やや黄金がかったレモンイエロー。ディスクは中程度の厚さ。
リンゴと白い花の蜜、強い石油などの鉱物香。奥にはシトラスとリンゴチップス、ゴムの香りも。
華やかな果実味のアタックをこなれて上品な酸が包んでいます。バランス良し。
パイナップル的ニュアンスを帯びたアフターが長めに続きました。
・紅茶(NO PHOTO)
ダージリン ファーストフラッシュ シンブリ農園 DJ-49 クローナル
マスカット、クローヴ、スパイスの香り。つるりとしていてさすが品があります。
去年のようにワイン樽香のような滑らかな余韻が続き、今年もお世話になってます。
ニルギリ スペシャリティ コーラクンダー農園
ニルギリらしい春の野原を連想する清涼感と有機栽培からくるふわふわと甘い味。
去年のトロピカルなタイプも面白かったのですが、こちらはニルギリの王道をいってます。
ゴールデンリーフ賞を受賞したのもうなずけますね。
ネパール ジュンチヤバリ農園 ヒマラヤン・スプリング
毎年別次元を行く孤高の農園からのファーストフラッシュ。
ほぼ感じられないくらいに軽いストラクチャー、繊細な甘み、ホワイトマッシュルームのような香りがインパクト大。
ジークレフオーナーは今季の1stを「一歩未来を進んでいるような味」と表現されていましたが、
なるほどその通りだと思います。毎度のことながらぶっ飛んでいらっしゃる。
長いですね。
ボクもそう思います。
長いです。
音楽のほかに小説、マンガ、飲料も防備録代わりに書いてみました。
だからいつもより余計に長いです。
・音楽
tUnE-yArDs / W H O K I L L
プリミティヴかつパワフルなパーカッションとベースに全く力負けすることのない
メリル・ガーバスの声が実にエネルギッシュなチューンヤーズの2ndアルバム。4ADからリリースです。
ザ・スリッツやMIAのごときしなやかで野性味溢れる声の持ち主かと考えておりましたが、
むしろこちらサイド主体のアルバムも聴いてみたいと思わせるような
M9に代表される繊細なヴォーカルもとれるのが実に驚きであり、素晴らしいと感じます。
自主製作盤であった1枚目では用いられなかった電子楽器類も今作でいいアクセントを出しております。
BiznessのPVもまた絶品でございます。
Battles / Glass Drop
メインソングライターであったタイオンダイ・ブラクストンが脱退し3人組となった
ブルックリンのスーパーグループによる2枚目。Warpより発売。
遊び心担当であったタイオンダイがいなくなったことでさらに無駄を省きタイトになったといった印象です。
翻して申せばやや筋肉質に過ぎるのではという疑念も頭をもたげておりまして、
そのせいかアルバム後半につれて観賞に疲れてしまうということが何度かありました。
若いころなどはケロリとした顔で1周聴けたのでしょうが、歳は取りたくないものであります。
とは言いましてもトマホークのドラムとドン・キャバレロのギターがなお在籍することを念頭に置きますと
天才タイオンダイといえどバンドの支柱のひとつというわけで、
彼の脱退によってただのマッチョなグループとなることなどは考え難く、
つまりいわば過渡期に当たる作品となるのではないかと予想しております。
2011年淫靡なPV暫定1位です。男の夢詰め込んだかのような。
しかし去年のニュー・ポルノグラファーズのPVといいアメリカ人は空手好きですね。
Fleet Foxes / Helplessness Blues
2008年にデビューし、その1stアルバムが世界各メディアの賞賛を浴びたことで一躍有名となった
シアトルのフォークロックバンド、フリートフォクシーズの2枚目。リリース元はSub Pop。
美しいコーラスとアコースティックギターのメロディーラインを主な骨格とし、
ブルーリッジマウンテンやミコノス島、モンテズマにローレライといったように
世界各地の風光明媚を題材としたものも多い楽曲群が持つ、立ちのぼる霧のような視覚感と少しの暗く醒めた香りは
楽曲のキャッチーさが薄くなった分だけ、今作でより一層洗練され濃くなったように思います。
早く来日情報が来ないものでしょうか。
※PVは1stの国内版に収録されている「ミコノス」です。いつ聴いてもとびきりに美しい。
Panda Bear / Tomboy
ブルックリンの首領、アニマル・コレクティヴのメンバーによるソロ4作目。Dominoより発売。
前作「パーソン・ビッチ」で見せた遊び心の効いたサンプリングはなくなり、
バンドの最新作「メリウェザ」の油絵めいた極彩色のタッチを淡い水彩画にし、
盟友ブラフォード・コックスのソロ名義アトラス・サウンド風味に仕立てたと申しますか…。
今までと違いパンダ・ベアの歌声を主軸として作られた作品のように感じます。
Droneと銘打った曲さえも彼の声で押し切っているあたり、かなりその意識が強く出ているかなと。
クラウトロックの香りなどもややしますが、それでも今までの作品と比べると実験精神はやや気薄、
よくいえば程良く力が抜けた作品、言い換えると想定内の出来にとどまっていると言えます。
とはいえ再生回数は既に30回を超えており、やはり気に入っております。
Damon & Naomi / False Beats and True Hearts
1980年代のバンド、ギャラクシー500のメンバー2人によるユニットの通算8作目。20|20|20より発売。
80年代で好きなバンドを挙げろと言われると、トーキング・ヘッズやスミス、ピクシーズらと共に
ヴェルヴェッツから連なるニューヨーク・ロックの系譜上に位置するこのバンドの名が出てきます。
20年以上前のデビューアルバムから変わらず依然としてエヴァーグリーンといえる
この叙情的な楽曲たちにはどうにも抗うことが出来ません。
それどころか「On Fire」などよりもさらに深みが増しているように思います。
ラベンダーと子供達という会心のアートワークや繊細な歌詞も含め、全てがギャラクシー500の世界。
The Antlers / Burst Apart
ブルックリンの若手3ピースバンドの4thアルバム。レーベルはFrench Kiss。
鬱屈した歌詞と甘いメロディー、グズグズにしたようなエフェクト処理などからみるに
ブラフォード・コックスの影響下にあるバンドのひとつではないでしょうか、
ディアハンターとの違いとしては、楽曲の中にどこか苛立ちといった類の感情が潜んでいるところと
ヴォーカルであるピーター・シルヴァーマンのどこか攻撃的な声といえるような気がします。
アルバム全体にわずかに漂う、パンク精神はそれらから感じ取ったものかと。
ハイライト・トラックの「Every Night My Teeth Are Falling Out」からもわかりますとおり
自身の内部に溜まったどうにもならない不満(歯が抜け落ちる夢というのは性的不満を表すとされている)
を外に爆発させるのがディアハンターとの決定的な違いというふうに解釈しております。
アルバムタイトル「木端微塵」通り、実は21世紀パンクと言えるかもしれません。
EMA / Past Life Martyred Saints
元Gownsのエリカ・M・アンダーソンによるソロ1作目。リリースはSouterrain Transmissions。
ピッチフォークで高評価でしたので、試しに無料ストリーミングを聴き、のち購入。
なにか70年代プログレを感じさせるような展開のM1で始まるこのアルバム、
ポップとエクスペリメンタルをかけた秤の塩梅具合が実に良好です。
全域において鳴らされているフィードバックノイズも良い味付けで、
その緊張感と本来楽曲が持っているポップセンスのバランスでもって最後まで一気に聴けます。
カート・ヴァイルや後述するキャス・マッコムといい近頃のUSインディーSSWは興味深いですね。
Burial / Street Halo
ロンドンのダブステップメイカー、ウィリアム・ビーヴァンによるユニット、ベリアルの新作ヴァイナル。
リリース元はHyperdub。
久しぶりの新作ですが、相変わらずうっとりするほど完璧なアンダーグラウンド・サウンドです。
重心は徹底して低く、地響きのようなビートと冷たい空気を連想させる音響処理。
近年、他ジャンルとのクロスオーバー化著しいダブステップ(質の低下がやや懸念されます)ですが
この人は全く見向きもしていないのですね、ストイックに淡々と掘り下げています。
表題曲も含め3曲収録ですが、墨汁の如く芯からエッジまでひたすら黒く濃厚な20分レコードです。
本当に心の底から「カッコいい」。ちょっと別格すぎる気さえします。
2011年ベストシングル候補筆頭なのは間違いないかと。
Kode9 & Spaceape / Black Sun
Hyperdub主宰でありダブステッブメイカー、スティーヴ・グッドマンの2作目。Hyperdubよりリリース。
なにより購入した動機となったアートワーク、まずはこれに尽きます。
ダブステップとこの水で滲んだかのような日本画の組み合わせの妙など誰が考えましょう。
そしてブラック・サンというタイトル以上にどす黒く強迫的な内容。
ダブステップの黒さとはまた違う黒さ暗さといいましょうか、
ベリアルに代表されるダブステップの黒さとは雨に濡れたコンクリートの黒と言えると思うのですが、
この作品のそれは呪術的で薄気味悪さ付きまとう井戸の底を覗き込むかのごとき黒さであります。
今作ではデトロイト・テクノの影響も散見されますが、URなどのそれとも違うなんとも異質な黒さ。
それがこの作品の得体の知れない魅力であり、怖いもの聴きたさで何度も聴いてしまう理由なのかと。
それにしてもこのアートワークと内容…。予言めいてるという意見を持たれても仕方ありません。
2562 / Fever
オランダ人トラックメイカー、デイヴ・ユイスマンの3作目。When In Doubtからリリース。
DIY精神豊かな最小構成のミニマルテクノを主体としつつデトロイトの黒さもまとっており、
デイヴが幼少の頃に撮られた写真をあしらったアートワークからも読み取れる通り、
過去に敬意を表しつつ最新鋭を構築させた素晴らしいいぶし銀ダンス・ミュージックです。
ファンキーな全体像であり彼の情熱を感じずにはいられません。
フィーバーというタイトルにふさわしい内容かと存じます。
Cass McCombs / Wit's End
カリフォルニアで活動する変わり者なSSWによる通算5枚目にあたる作品。Dominoよりリリース。
初期の作品にあったザ・スミスの香りは全く感じられないくらいに、甘く耽美な曲のみで構成されております。
ギターもドラムもピアノも全てがつつましく、わずかなブレも感じさせない47分間でございます。
就寝前、ベッドに横になってする読書に実によく合います。
まだまだ未熟ながらも音楽を聴くうち、自分の趣向が変わっていくのが分かりまして、
と言いますのも段々とメロディーやテクニックなどよりも音の質感に重きをおくようになって参りました。
少年マンガの線のようなガチャガチャとした質感、氷の角のようにヒヤリとした質感、
ドイツの硬水のようにストイックな硬度の質感、ジャムのようにドロドロぐちゃぐちゃとした質感、
メタリックな機械に使われるような金属的質感、もちろん作品によって様々な感触があるのですが、
この作品は指でつまめそうなほどに丸く、それでいてすこし湿ったまりものような質感です。
Stimming / Liquorice
ドイツのトラックメイカー、スティミングの2枚目。リリースはDiynamic Music。
ミニマルのややツルリとした丸い質感にジャズの黒みを少し溶かしたかのような作品。
的確に配置されたサンプリングと東洋&アフリカ趣味的な楽器音や旋律も散見され、
その淡々とした進行が徐々に穏やかな高揚を与えてくれる実に素晴らしい作品かと存じます。
似た方向性の新譜として以前紹介いたしましたニコラス・ジャーがありますが
こちらはより内省的で実験的。ダンスフロアからかなり遠いところで作曲しています。
しかしこの手で触れられそうなくらいの音の粒。
Friendly Fires / Pala
UKのダンス・バンドによる2枚目。リリースはXLから。
彼らの1stアルバムはあまり好みとするところではなかったのですが、今回はやられました。
上に書いたような音の質感もこれを聴くとどうでもよくなってしまいますね、すごいキラーチューン。
ベリアルはレイヴ・カルチャーへのレクイエムという代名詞が時折使われておりましたが
そうなるとこちらはレイヴ・カルチャーに対するなんと形容されるのでしょうか?
彼らはレイヴの終焉とともに思春期がやってきた世代でしょうから、やはりレイヴに対する憧憬でしょうか。
本家と比べ底抜けに明るいのも憧れからと考えれば納得ですし、また同世代のボクも頷けるところがあります。
アルバム全体につきましてはこちらのHPの全曲無料ストリーミングで数回聴いた程度ですので割愛。
とにかくこの曲のカッコよさには痺れました。
・読み物
ミシェル・ウエルベック / 素粒子
ブリュノとミシェルという、ひとりはコンプレックス、片方は冷淡なため形は全く違えど
愛が得られない2人の兄弟の鬱屈した精神をSFやエロスを交え描いたフランス小説。
文章に理路整然めいた美があることがなによりも特徴として挙げられます。
その硬性の文学のなかに、現代社会にまつわるあらゆるもの、
それこそフロイトからP・K・ディックまで詰め込んだ作品のように感じます。
その詰め込みがやや過ぎている部分があり、
それがまた既存のフランス小説とはまた一線を画しているようにも感じますが、
とにかく読んで損はない作品かと存じます。
トマス・ピンチョン / 逆光
20世紀初頭の激動期にあるアメリカにあった2つの家の因縁を中心に据えて、
ありとあらゆるもの、つまり世界経済・国家摩擦・民族問題・宗教観・世紀的発明・20世紀B級SFなどを
大鍋に投げ込みごった煮にし最後に爆弾投げ込んだような、ピンチョン節炸裂ともいえる最新作。
とにかく話が桁違いに壮大なのはいつも通りなのですが、
今回はあまり掴みどころをよく把握できないままに読み終えてしまいました。
ピンチョンですとボクは「競売ナンバー49の叫び」などが好みなのですが
あの作品のように隅々まで構築されているかと聞かれるとやや疑わしいところもあるように思います。
が、とりあえず日本文壇では生まれえぬスケールの小説であることは間違いなく、
また時が経ったら読みなおしをはかりたいと思う次第でございます。
阿部和重 / ピストルズ
「シンセミア」以後の神町サーガを書いた、いわば続編。
阿部和重の歳代の特徴である堅苦しくもどこか奇妙な印象を抱いてしまうような文章と
そこに潜ませた意味ありげな謎の単語などでドロドロになるまでタメをつくったあと
一気に加速させラストまで持っていくという手法(特に初期作品に顕著)は今回も健在であり、
途中で投げ出さなければ十分に楽しめる佳作となっておりました。
こういう手法を書かせたらこの人が一番だとは思いますので、
阿部和重作品を未体験かつクドさのある文に抵抗のない方でしたら、ぜひ一読されてみては。
ジェイン・ジェイコブズ / アメリカ大都市の死と生
いかんせんわかりずらい難解な訳に終始しておりましたので読み切るのに大変骨を折ります。
都市社会論のジョゼ・モウリーニョみたいな人だなぁといった感想。
既存の都市論にありがちだったという理想にすぎない机上の都市論などをズバズバと批判しつつ、
とはいえ市民論に依ることこともなく、むしろ市民にありがちな安全意識、見かけだけのエコ意識
についても鋭い洞察でもって問題があるということを本文中で促しています。
まさに目から鱗、現代社会都市論としてとても新鮮な内容でした、惜しむらくは読みにくいこと。
内容が凡庸でしたら完全に50ページほどで投げてたことでしょう。
ヴィンランド・サガ / 幸村誠
プラネテスの作者による、中世イングランドを舞台に一人の青年の成長を綴った物語。
温かみのある会話と滲み出るような深みはさすがの一言です。多少の誤差あれど人間歳を取るにつれて
刺々しく攻撃的→棘がとれてやや内省的になる→穏やか
という具合に風化するものとは思いますが、その描写がとびぬけて卓越していますし、
きっと作者が一番伝えたいことなんだろうと思います。
ボクもその考えに同意しますし、そのように成長していきたいと思っております。
へうげもの / 山田芳裕
史上最悪の打ち切り劇といわれた未完の大作「度胸星」の作者が連載中の歴史物。
古田重然が主人公という、戦国時代マニア、もしくは古き良きKOEI作品を嗜んだ方ならニヤリとするような視点から描いた作品。
線の太い特徴的かつダイナミックな絵で茶道とその周りに息巻く陰謀欲望を生々しく描いています。
本能寺の首謀者といった、昔から話されている異説なども上手くとりいれ、
戦国マンガとしても楽しめる内容ではないでしょうか。
・ワイン
メモリーズ シャルドネ 2010
チリの某有名生産者を作っているらしいシャルドネ。580円。
チリ産とはいえこれはコストパフォーマンスがずば抜けています。500円台でこの品質。
やや緑がかったレモンイエロー。洋ナシ、リンゴの蜜のような香り。
スレンダーな果実味とキレイな酸を樽由来とおぼしき甘みがささえています。
しつこくなくスッとしたアフター。バランスの良い王道安旨シャルドネ。
なによりも値段。1400円くらいの味がします。
ブルゴーニュ ピノノワール 2008 / ロベール・シュルグ
ブルゴーニュのいぶし銀生産者。1780円。昔プティモンを買ったらブショネでしたが、それ以来。
昔は鋼の熟成必須型でしたが、2007年から作りがグッと現代的になり即飲みできるようなものになったそうです。
少し濃いめのルビー色。イチゴ、ラズベリー、梅、ミネラルの香り。
スパイス混じりの豊かな果実味とマロ発酵由来の優しい酸、まだまだ元気なタンニン。
深みがあり構成がしっかりしてます。2日目がピーク。生の赤果実かじってるかのようでした。
いいピノです。
ブルゴーニュ ピノノワール 2009 / ジョエル・ユドロ・バイエ
2380円。軍隊上がりのダンディマッチョが作る滋味深い生産者です。
鮮やかなルビー色。グーズベリー、イチゴがまず来て、次いでリコリスやスパイスの香り。
スケールは小さいものの、圧倒的果実味。酸はやや抑え気味なので緊張感はないが
それを補うほどのフルーツバスケット状態。シャンボールミュジニー生産者らしい細かいタンニン。
例年と比べややニューワールドっぽくなってるのはやはり2009年の気候のせいでしょう。
今飲みに最適でした。開けて半日がピークっぽかったです。
ヴァン・ド・ペイ ピノノワール 2009 / ヴィニョーブル・ギョーム
2280円。当代一の苗木家が南仏で作っているピノの09年もの。
やや赤みがかったルビー色。ディスクはやや薄めで液体はわずかに濁り。
ラズベリー、スミレ、なめし革、ミネラルの香りなど。開戦直後には還元臭も。
凝縮した果実味、健康的で上品な酸、ほどよく細かいタンニン。
スタイリッシュな複雑味とボリュームがあり、フィネスの気配さえもあります。
あと3年ほど寝かすと素晴らしいことになるのではないでしょうか。2日目さらにおいしくなりました。
ヴェレナー クロスターベルク カビネット リースリング 1999 / シャトー・ベレス
2180円。ドイツの熟成リースリング。
やや黄金がかったレモンイエロー。ディスクは中程度の厚さ。
リンゴと白い花の蜜、強い石油などの鉱物香。奥にはシトラスとリンゴチップス、ゴムの香りも。
華やかな果実味のアタックをこなれて上品な酸が包んでいます。バランス良し。
パイナップル的ニュアンスを帯びたアフターが長めに続きました。
・紅茶(NO PHOTO)
ダージリン ファーストフラッシュ シンブリ農園 DJ-49 クローナル
マスカット、クローヴ、スパイスの香り。つるりとしていてさすが品があります。
去年のようにワイン樽香のような滑らかな余韻が続き、今年もお世話になってます。
ニルギリ スペシャリティ コーラクンダー農園
ニルギリらしい春の野原を連想する清涼感と有機栽培からくるふわふわと甘い味。
去年のトロピカルなタイプも面白かったのですが、こちらはニルギリの王道をいってます。
ゴールデンリーフ賞を受賞したのもうなずけますね。
ネパール ジュンチヤバリ農園 ヒマラヤン・スプリング
毎年別次元を行く孤高の農園からのファーストフラッシュ。
ほぼ感じられないくらいに軽いストラクチャー、繊細な甘み、ホワイトマッシュルームのような香りがインパクト大。
ジークレフオーナーは今季の1stを「一歩未来を進んでいるような味」と表現されていましたが、
なるほどその通りだと思います。毎度のことながらぶっ飛んでいらっしゃる。
長いですね。
ボクもそう思います。
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自己紹介:
ボクのHNの「ぺ」が実はカタカナなのかも知れぬ、などとは微塵も疑わず、当然のようにひらがなと思いこんでしまって果たして大丈夫なのでしょうか。
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